推薦のことば

「脳のアップグレードが不可欠な時代」

ハリウッド女優・ブレスワークファシリテーター・フラクタル心理カウンセラー  中村 佐恵美

中村佐恵美

私は、科学を神と崇める人たちがたくさんいるアメリカに30年以上住んでいます。この30年の間にも、科学やテクノロジーは目を見張る勢いで進歩しています。そして、神経学者や物理学者のなかには、これまでの常識を逸するような世界観、「この世界は仮想現実だ」と発表する学者も増えてきました。

例えば、意識の研究をしている神経学者のアニル・セス博士は、TEDトークで「あなたが認識する現実は、あなたの脳が生み出した幻覚」というテーマで話をしていたり、物理学者のアミット・ゴスワミ博士は、ドキュメンタリー・ドラマ「What’s the Bleep Do We Know!?」の中で、「私たちは、自分の外側に世界が実在すると信じていますが、科学は、私たちの内側で生じていることが、外側の世界を生み出していることを明らかにしている」と話しています。テレビ・シリーズ「ブレイン・ゲーム」に登場する神経学者のボウ・ロト博士は、「すべては脳が生み出す錯覚であり、私たちが視覚から認識しているような外側の世界は実在しない」としています。

科学界だけでなく、ビジネス界やクリエイティブな専門職のトップ層に君臨する人々の間でも、これまで確固たる形を持つと信じられてきた現実世界を、仮想現実だと捉えるのはもうそれほど奇異なことではなくなってきています。世界的に著名で影響力を持ち、映画「アイアンマン」のモデルとされている実業家・エンジニアのイーロン・マスク氏も、私たちが生きる世界は仮想現実だと信じています。こうした世界観を持っている人々の中には、このVR(バーチャル・リアリティー)ゲームのような世界で、日夜、どの知識を獲得し、また、手腕を磨き高めていくかを思考・試行しながら、いかに無駄のない動きを習得して功績(得点)を積み上げて、活躍の舞台をアップグレードするかを目指して躍進している人たちがいます。

そうした科学的な発見、医学の進歩、テクノロジーの開発や、より正確で迅速な情報伝達を可能にするシステムの開発などを目指して研究を続ける人々は、常にゴールを目指しています。まずは、創り出したい物事の完成したイメージや、明確な到着地点があり、そこへ向けて前進することに専念しているうちに、新しいテクノロジーやエンジニアリングが開発されてきて、ビジョンを現象化することを可能にしています。こうしたトップ・プレイヤーたちは、次のレベルへ挑戦することを指針とし、常に未来を見据えています。

ところが、そうした進化が私たち人間により多くの幸福感をもたらしてくれたかといえば、そうでもありません。むしろ心のバランスを失い、心を病み、肉体の健康をも蝕まれ、トラウマやうつを抱えながら未来への希望を失った状態で、将来の不確実性に感情を揺るがされながら不安とともに生きている人が激増しているのが現状です。
アメリカには、そうした輝かしい功績を生み出して社会へ新たな価値をもたらすトップ・プレイヤー達がいるのと対照的に、日本から見ると信じられないような問題が存在しています。

・根強くはびこる人種差別問題
・製薬会社が中毒性のある鎮痛剤を売り出し、中毒者のドラッグ大量摂取により、約15年で50万人以上の死亡者を出したオピオイド・クライシス
・帰還兵士が患う心身障害、PTSDやメンタルディスオーダーによって職につけないために陥る貧困生活、そして、自殺率の激増
・警官による、武器を持たない市民に対しての過剰暴力・殺害事件
・特定の人種やソーシャル・グループを狙った大量虐殺乱射事件

このように蔓延する社会問題は、今にはじまったことではありません。開拓時代以来、アメリカのこうした社会問題が解決されたことはありません。最近は人種差別・偏見についても、歴史は変えられない、そのために人々の固定観念もそうそう変えられるわけではないということで、制度的差別(Systematic Racism)と、アメリカ社会の構造的要素のひとつ、つまり文化のひとつだと表現されるようになりました。このようにアメリカの社会問題が解決へ向かわない理由のひとつに、歴史的背景が絡んでいることがわかります。

私がこちらで暮らしている間にも、アメリカでは、社会制度の不平等を訴えるデモ抗議や、社会制度に抑圧されたとの憤りから勃発する暴動、乱射事件がたびたび起こりました。
こうした出来事をニュースで観ると、誰も根本的な解決策がないままに、行政、管理者、または、別の価値観を持つ人々を責め、「自分たちがこんな酷い目に遭っているのはおまえ達の責任だ! だから、こちらが満足するようになんとかしろ! 責任を取れ!」と感情を使って訴えることで世間の注目を集め、社会制度に影響を与えようと意図しているように見えます。

このように、アメリカに住んでいると、まるで二つの別の社会に住んでいるようです。人間離れした脳で未来を推進する人々。200年前から同じ問題を引きずっている人々。ここには大きなギャップがあります。まるで、天へ向かって上りつめる勢いの人と、地を這いながらようやくサバイバルしている人がいるかのような違いです。現在を生きる人々のメンタル・クオリティにこうした凄まじい「思考格差」が生じていることは否めません。このギャップはどうして生じるのでしょうか。それを解消する方法があるのでしょうか。

若い世代には大人たちとは別の試練が訪れています。インスタグラムなどのSNSに熱中する10代、20代の若者の自殺率が高まっています。テクノロジーの進化に伴い開発されるアプリケーションに依存することで、自分の喜怒哀楽をコントロールする能力も失ってきています。サイバーブリー(ネット上のいじめ)やハラスメントを受ける可能性が高まり、自分にはどうすることもできない、自分のいる状況を変えることができないと落ち込み、こういった状況に対処することから逃れようと孤独にはまり込むこともあります。嫌がらせをしてくる相手から「オマエなんか死ね」と書いたテキストメッセージを読んで、すぐに死んでしまったといった事件もありました。
自分で考え、選び、行動するという、生きるための基本的な思考回路が充分に発達していない子供達、言い換えれば、自分の思考回路を使わなくても済んでしまうほど情報過多の子供達が多いということです。そのような貧弱な脳のまま社会人になり、世間の荒波に揉まれるのは、それこそなんの予備知識もなく訓練もされていないプレイヤーが、VRゲームのレベルワンでいきなりプレイするようなものですから、あっという間にゲーム・オーバーになってしまうでしょう。

これまで、自分で考え、自分で選び、行動を起こして望む結果を生み出す能力を培うための脳のアップグレードが、これほど必要な時代はありませんでした。テクノロジーの進歩を生み出す思考回路の人たちがいる一方で、テクノロジーで思考回路が退化してしまうような人たちがいます。端的に表現すると、垂直方向へ進化する人々と、いつまでも地を這って水平方向にうろうろする人々です。そして、水平方向の人々がしているのは、社会制度・システムを敵として、鬱憤、悲しみ、憎しみといった感情を武器に悪戦苦闘を繰り返すことです。なぜこの人々は、脳のアップグレードができないのでしょうか?
みなさんは、なぜ、このようにはなはだしい違いが生じているのか、考えてみたことがありますか? 

私たち人類の今後の未来が明るいものになるか、破滅へ向かうかは、どれだけ多くの人が、心の仕組みを学びながら、脳の正しい実践的な使い方を覚え、時代に合わせて思考回路をアップデートしていけるかにかかっているような気がします。そうでもしない限り、私たちは、幼児期とさほど変わらない脳の使い方のまま、歴史をなぞるかのように過去の延長戦を生き続けるのです。

私は、起きている時間の大半を、こうして脳が感情にハイジャックされた水平線状態で立ち往生しているたくさんの人々に、心理系ワークショップのひとつであるブレスワークやTAW(フラクタル心理学)のカウンセリングのセッションをしています。それを通して、人々が、いかに受け身で、自分で考えて選択する力を失っているかを目の当たりにしてきました。そして、それこそが現代人が患ううつ病、パニック障害、不安症、自殺願望のような、アメリカの社会・医療問題ともなっているメンタル・ヘルス・クライシスの原因ではないかと考えます。

最近も、UCLA Healthから、メンタル・ヘルスのリサーチへの協力者を募る知らせがきていました。そこには、現在、世界でうつ病を患っている人は二億五千万人、四人家族のうち一人はメンタルヘルスの問題を抱えている割合で、この先20年は、うつ病を患う人は急増し続けるだろうとされていました。10年以上前に、アメリカでは成人の三人に一人は、抗うつ薬を処方されているか、されて服用した経験がある、というデータが紹介されていたので、今は、その数字をはるかに上回っていると想像できます。

アメリカでは心理療法プログラムは、罪を犯した人に義務化されることもあり、また、健康保険が適用される心理セラピストも多いくらい、社会制度のなかに組み入れられてビジネスとして確立しています。そのため、週に一回のセラピーのセッションを、たいした変化がなくても、なんの違和感も持たないまま長期にわたって通い続ける人達もたくさんいます。
ところが、西洋医学の心理療法は一般的に、薬で症状を抑えるだけなので、個人の心の問題も、アメリカの社会問題と同じく、なかなか解決へ向かいません。根本的な原因を突き止めて、それを本人に自覚させ、自律的にその原因を治していく方向性を指導することで解決へともっていく、という理路整然としたメソッドがありません。
 
このような解決へ向かわない精神治療を打破しようと、最近は、MAPS*1に代表されるように、MDMA*2やPsilocybin*3などの覚醒作用をもたらす薬を使ってのうつ病や双極性障害といった精神障害の治療や、末期癌患者が恐れずに死を迎え入れるための精神安定を目的とした心理療法とリサーチが復活してきました。また、抗うつ剤よりも迅速で目覚ましい効果を出すケタミン剤*4を投与してのうつ病治療・心理セラピーも一般化してきています。アメリカでは、こうした慣習にとらわれない形での精神治療法の開発を試みるながれもあります。しかし、革新的な方法で、患者の症状が一時的に良くなるとしても、環境に合わせて自分で脳をアップグレードしていく能力がつかないのであれば、それまでと同じように、今度は、覚醒作用を持つ薬に依存する可能性も出てくると考えられます。
*1 Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies.
*2 Methylenedioxymethamphetamine, 通称ecstasy.
*3 マジックマッシュルームの覚醒作用を持つ成分。
*4 極少量の麻酔薬。

実は、私自身もアメリカで7年近く心理セラピーに通い、10年ほど、精神安定剤や睡眠薬を処方してもらっていた時期がありました。あの時期は、頭の中に霧がかかっているような状態で、まるで色のないモノクロの生活のなかにいるようで、自宅でテレビや映画を観て感情を揺るがすことが、唯一の楽しみだったように思い返します。完全な受け身でした。

私は、1980年代後半、日本がバブル絶頂期だった時期、東京でOLをしていましたが、90年に会社を辞めて、ままならぬ英語力とスーツケースひとつを持って、ハリウッドで女優になるという夢に挑戦するためにロサンジェルスにやってきました。

東京の礼儀を重んじる職場環境しか知らなかった私には、当初、己の損得勘定だけを基準に、感情をむき出しに自己表現するアメリカ人のエネルギッシュな姿は、圧倒されるほどパワフルであると同時に、無骨で原始的に見受けられました。ネイティブの小学生レベルの英語力しかないままロスサンジェルスで生活をはじめたときは、自分の意向をきちんと表現できなかったため「しっ、しっ!」と犬でも追い払うかのようにあしらわれたことが何度もありました。当時の私は、悔しさと情けなさに涙を流し、泣き疲れては眠りに落ちる日々でした。

弱音や不平不満を吐けば、「帰れる国があるのならさっさと帰れ!」と一喝されたでしょう。私はアメリカに夢を叶えるために来たのです。それを確認すると、負けて泣いて東京へ帰るくらいなら、サバンナで動物の餌となり、大地の肥やしとなって自然に還る、それくらいの貢献をした方がまだマシだ!と己を鼓舞し、「もう自分には帰る国はない、この国で自分の道を切り拓いてみせる!」と決断しました。

本書を読み進んでいただければ、このことから、私がどんな脳の使い方から、どんな脳へと意図的に変えたかがおわかりになるでしょう。当時はわかりませんでしたが、現在の私には、昭和後期の平安な日本を飛び出した理由が理解できます。私は、そこそこに力を出していれば中流層に属してのほほんと暮らしていける人生に満足できなかったのです。強くなければ生き延びられない、才能を磨かなくては並みいる強敵を押しのけて仕事を獲得できない、才覚がなくては絶対に社会で成功できない、この弱肉強食の世界へ足を踏み入れて、心身ともに切磋琢磨されながら、その時その時を最高の自分として誇り高く生きることを目指してアメリカに来たのです。

こうして培われた私の新しい思考回路は、後々、ハリウッドで女優としてコンスタントに仕事がとれるようになって、アカデミー賞を受賞した著名なプロデューサー、監督、役者たちともご一緒する機会にも恵まれ、また、日本では自叙伝のようなエッセイを何冊も出版していただき、ハリウッド・ヒルズに高級コンドミニアムを購入するなど、28年間、ロサンジェルスで自分の能力で生計を立てながら、次々と夢を叶えることを可能にしてくれました。


しかし、このような強引な脳の改革はそのうちストレスを起こします。そして、ついに心理療法を受け、精神安定剤を飲む状況へと至ったのでした。まさに、アメリカが抱えている問題の根本的な原因と同じルートをたどったのかもしれません。
心を病んでいるあいだ、ただテレビのスイッチをオンにして画面を見つめているだけでできる感情体験に慣れ親しんだ結果、私の脳は、外側から入ってくる刺激に敏感に反応するようになっていました。感情世界とは恐ろしいもので、そこが悲劇や恐怖を繰り返し感情体験する場所でも、脳が刺激的な感情体験に囚われている無意識領域なので、本人はその問題点を自覚できません。さらに、感情ではなく、能力を使って自分の人生を創造する、もっと面白くてやり甲斐のある生き方をしている人々が集まる世界があることにも気がつきません。
変わらなくてはいけないとわかっていても、「死んでもいや!」という気持ちがわいてきます。一度は脳を積極的に改革したのに、二度目はもう絶対に嫌なのです。いきなりアメリカという恐竜の跋扈する世界に自分を放り込むようなマネはもう二度と体験したくないのです。

そんな精神状態で暮らしていた私に、一つ上の意識レベルを垣間見せてくれたのが、ホロトロピック・ブレスワークでの体験でした。2012年から、もっと精神的に楽に生きたいという思いで、ホロトロピック・ブレスワークという呼吸法をつかって、自己の成長を阻んでいるエネルギーのブロックを解放するというワークショップに参加するようになりました。 このホロトロピック・ブレスワークはチェコスロバキア出身の精神科医、スタニスラフ・グロフ博士によって開発されたものです。私はそこで、人間はこの肉体だけにとどまらず、より大きくミステリアスなフォースによって生かされている、また、全ての存在の源を辿れば、そのミステリアスなフォースとひとつだということを教わりました。ここで初めて、いわゆる潜在意識やそれを越えたものを視野に入れるようになったのです。

ここで、私が仮想現実の中で生きていることを初めて実感したブレスワークでの体験をご紹介したいと思います。
それは、私がホロトロピック・ブレスワークのファシリテーターになるための養成プログラムの過程をこなしているときでした。ブレスワークによる拡張した意識状態の中で、私は、ヨーロッパ中世期の戦場で傷を負って死にゆく若き兵士としての自分を体験しました。それは、父との前世と言えるもので、一回目に見たときは、私が父に見捨てられて死んだと感じるもので、二回目に見たときには、まったく同じシーンで父の心の中を体験すると、父は私を見捨てたのではなく、すでに私は死んでおり、それを悼んでいたというものでした。この二つはまったく逆の見方でした。一回目は父を責める気持ちになり、二回目には父の大きな愛を感じたのです。 なぜこのような違いが生じたのでしょう?
その理由は、私がそれまで信じてきた「己の子供を見捨てる心ない父親」像は、頭の中で思い描き、捏造したキャラクターに過ぎないからです。父親に悪役をやらせていれば、私は、その被害者としていつまでも父を責めていられます。私が幸せになれないのは親のせい、私が愛を知らないのは親のせい、私が満たされないのは親のせいだと、なんの努力もしなくても悲劇のヒロインを演じていられたからです。
つまり、ブレスワークのセッションで体験した前世の登場人物は、私が好き勝手に脚色して生み出し、頭の中に登録していた空想上のキャラクターに過ぎないということです。私が「こんな嫌な奴がいる」と感じるのは、そうした役柄が私の頭の中にあるからであり、外側の世界には実在しないのです。私が認識する他人は全て、私が空想して生み出したキャラクターを外側に投影して、そういうキャラクターがあたかも実在しているように認識しているだけなのです。私が外側にいると信じている他人は、どこにも存在しないのです。

最初に紹介した神経学者のアニル・セス博士が語る、「あなたが認識する現実は、あなたの脳が生み出した幻覚に過ぎない」というのを実感できたとき、私は、言いようのない安堵感に包まれました。なぜならば、私の現実は、自分のなかにある妄想の仮想現実であり、外側に、私を陥れようと企む敵がいるわけでもなく、突然不幸な事件が起こって巻き込まれるようなこともないからです。
私は、女優という職業柄、自分の感覚と感情を瞬時に操り、いかに役に成り切れるかということを重要視してきたため、自分で捏造した妄想のなかに自分を完全に閉じ込めることができるようになっていました。そのため、「この世界は仮想現実である」と納得したとき、私は、自分で脚本を書いてプロデュースした独り舞台、ワン・ウーマン・ショーで熱演を繰り返してきた主演女優なのだ、という現実のからくりがハッキリと見えたのです。

自作自演の幻想の世界で感情ドラマのループにハマっていることがわかった私は、次に、どうしたらこの「お茶の間人生劇場」の幕を下ろして、ひとつ上のレベルへ移行できるかを考えました。そして、私は、陳腐なメロドラマの悲劇のヒロインではなく、もっと大きな世界という舞台で活躍するため生まれてきたクリエーターという認識を強化し、「目覚める」ことを意図しはじめました。そして、一つ上のステージへ上がるために、自分のどの能力を高めるべきかということを考えはじめました。

このような経過をたどり、2016年に、ロサンジェルスにアメリカの拠点をおかれていたTAW理論の開発者である一色先生にお目にかかったときは、それが必然的な出逢いだと感じました。そして、TAWの主軸である、「思考が現実化する。100%例外なく!」を聞いたとき、この理論を学ぶことで、なぜ人間は、幻覚でしかないイメージを物質世界と捉えるのか、そして、そうした感覚体験をする目的はなにか、といった人生の謎が解ける!という確信と興奮が起こりました。
さらに、TAWフラクタル現象学のクラスでは、この仮想現実が生じる仕組みのたねあかしを見せてもらい、世界の構造を理解する能力が高まりました。

TAWは、この世界の仕組みを解き明かす理論です。しかし、この世界の仕組みを理解するためには、体系化された情報を処理できる論理的な思考回路をもつ脳が必要となります。もし、感情世界にどっぷり浸かって生きている人々に、いきなりこの仮想現実の仕組みを教えたとしても、「そんな恐ろしいこと言わないでくれ。それが真実かどうか科学的に証明できるのか?」とか、「こっちが納得できるように説明してくれなければ、そんなこと信じないぞ!」などと感情的になって抵抗するでしょう。 私が「お茶の間人生劇場」にはまり込んでいたことを自覚できたのは、ブレスワークで拡張した意識状態に入り、自分の立ち位置を俯瞰することができたからです。そして、TAWを学びながら、自分の現実に生じる出来事をいつでもひとつ上のレベルから俯瞰できるように脳の神経回路を組み替えてきたため、今ではブレスワークを使わなくても、この世界の仕組みが徐々に把握できるようになってきました。しかし、TAWに至るひとつ前のステップが重要だったのです。

一般的な心理学や心理セラピーで、患者の症状がなかなか治らないのは、感情的なナレーションに焦点を当てることを繰り返したり、感情を処理することを解決策と考えているだけだからです。この世界の仕組みを知らないために、それぞれの患者が、感情ドラマで大混乱した世界をどう整理して、どうやってひとつ上のレベルで人生の創造者として生きるために脳をアップグレードするかのメソッドが存在しないからです。
私は、自分が実際に体験し、効果を感じたことによって、ブレスワークのファシリテーターとなり、次にTAW(フラクタル心理学)のカウンセラーの資格も取得しました。多くの方に真理への道筋を示すことができれば、こんなにうれしいことはありません。

TAWは一元論に基づいています。一元論とは、自分の思考が100%自分の現実を生み出しているという理論です。外側にあるように見える仮想現実の世界の隅々までが、意識の深い部分にある情報が投影されてできたものだとします。そして、自分のどの思考が、どういう仕組みで、今の仮想現実を生じさせているかを学んでいきます。TAWを落とし込むことで、今まで信じていた、突然不幸な事件に襲われたり、不慮の災害に振り回されるような感情世界から抜け出すことができます。やがて、「確かに自分の思考が現実化している、100%例外なく!」という実感が深まるにつれて、自分が仮想現実を生み出しているプログラマーだということが自覚できるようになっていきます。
TAWを脳にダウンロードすることで、世界が混乱していたのは、自分の脳の混乱が原因だったのだとわかるのです。私たち一人一人が、自分の仮想現実のプログラマーであると同時に、それを体験するプレイヤーでもあるということが認識できるまで意識が拡張し、目覚めることが可能になります。
私のTAWの個人カウンセリングを継続で受けてくださる医学博士、心理学者、クリニカル心理セラピストたちからも、本書で紹介されるTAWの考え方が、人々の意識改革を先導する、この混沌とした世界に浸透すべく学問・理論だというフィードバックをいただいてきました。
 
本書には、一色先生が作られた誘導瞑想の動画の一部を、私が英語に直した英語版の動画をYouTubeで観て、TAWに興味をもった南アフリカ出身の20代の女性ギアナが、一色先生へ直接問い合わせをしたことがきっかけで始まったメールでのやりとりがまとめられています。 私が数年かけてたどってきた精神の発達のプロセスの理解を、本書では多くの方が簡単にたどれるように構成されています。

ギアナは正式なTAWの講座の受講経験がありません。ですが、一色先生から現象と心理の関係、そして、人生は整然とした構造を持つシステムによって作られていることについて学ぶと、その斬新なる理論を実生活へ取り入れたり、照らし合わせたりしながら実践することで、理解を深めていきます。また、若いため大人脳がまだ完全に確立しておらず、お山の大将ぶりのサル脳があるにもかかわらず、一色先生からの分析や指導を素直に聞き入れて、自分の勘違いや間違った見解を吟味し、潔く認めます。その姿勢に、たとえ胸にぐさりと刺さるような厳しい指摘を受け止めてでも「進化したい」「この世界や宇宙の仕組みを理解したい」という決意がうかがわれます。彼女が一色先生へつづる毎回のメールから、だんだんと認識力を広げ、心を成長させながら脳をアップグレードしていく様子がおもしろいように読み取れます。
一色先生は、巧みな表現さばきをしてわかりやすくギアナに理論を解説されているので、TAWの知識のない方にも楽しんでいただける読み物になっていると思います。 

私個人としてのここ数年の体験でも、この混沌とした世界情勢において、人間の意識改革を目指したり、思考回路の修正をすることで、生きるクオリティをより向上させたいと、熱心に個人セッションや自己開発講座を受けてくださる方も増えてきています。TAWについての英語の書籍はないかという問い合わせも増えてきたところに、こちらの著書が英語でも発表を予定されていることに、大きな喜びを感じるとともに、新しい世界の幕開けを感じずにいられません。
 
脳がより発達したプレイヤー達がいるVRゲームの上のレベルでは、現在の自分が知らない知識が行き渡り、そこでは、人々が生産的な意図を持ちながら有意義な生き方をしているのです。TAWは、自力で上のレベルへ上がって行ける脳へと自己を開発するための知識です。
進化した世界では、それまで見えなかった世界の別の側面を見ることができ、理解できなかった世界の構造が理解できるようになります。そして、無限の可能性、チャンスがあることを認識できるようになります。自分の人生を、自分の意図でナビゲートしていくという真の自由を手にすることができる世界です。そして、この仮想現実の隅々までを、自分がコントロールしているという生きることの醍醐味が味わえる世界です。
その高みから見晴らす世界が、ほんとうの世界の姿です。それは、被害者意識という化けの皮がすっかり剥がれた、美しくて安全で完全な世界です。私は、TAWの考え方が、この世界の混乱した状況を正しく整理でき、感情世界で堂々巡りを繰り返すたくさんの人々を、精神的な成長・自立へと導ける効果的な脳のアップグレード・メソッドだと確信しています。

これからはじまる一色先生とギアナのやり取りを読みながら、この斬新な世界観に興味を持たれる方が一人でも増えることを期して、推薦の言葉とさせていただきます。

ご購入方法

1.フラクタル心理学協会認定ステーションでご購入いただけます
2.アクエリアス・ナビ オンラインショップからも購入いただけます

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